真っ暗、真っ暗、真っ暗、息が出来なくてもがいて手を伸ばす。待って、ひとりにしないで。このままじゃ、檻の中に、
「……𓏸𓏸?……おい!おい!!」
ハッ、と目を覚ます。目の前には不安そうに私の手を握っている幼なじみ。夏休みの勉強会で、寝落ちして、それで……。
「めっちゃ魘されてたけど。大丈夫?」
「あ、はは……ごめん……」
「……また母ちゃんの事?」
「…………うん」
私のお母さん、だった人。世間一般で言うところの屑。男つくって借金して、私を売ろうとした人。幼なじみの親御さんが助けてくれた。
今でも夢に見る。瞳孔を開いて私を売ろうとする母の顔が。暗い場所は嫌いだ。母の顔が浮かんで見えてくる気がして。寝るのも苦手だ。なのに寝落ちするなんて、自分は相当疲れていたんだろう。
「勉強……って感じじゃねぇな。今日は帰るわ」
「うん……めっちゃ雨降ってるけど、帰れんの……?」
「近いし大丈夫……じゃねぇかも」
外はゲリラ豪雨と言うやつだった。最近非常に多くて困る。音も怖いし外出の時傘を持ち歩かないといけないし。何より危険だ。
「止むまでいなよ」
「んー……時間も時間だ。あんま迷惑かけれねぇし」
帰ろうとする幼なじみの袖を咄嗟に引っ張る。やだ、ひとりにしないで欲しい。
「あ、ぶない、よ……」
「……怖いから居てって言えばいいのに。そんな手震わせて引き止めなくても居るよ」
隣に座って、ぽんぽんと頭を撫でられる。こういう事されると、こいつが彼女つくらない理由を勘違いしてしまいそうになる。
「怖くない。帰れ」
「またまた強がりなこった。嵐来ても帰ってやらねぇ」
「……はぁ……」
ぎゅ、と手を繋がれる。やけに高鳴っている心は知らないふりをした。
『嵐が来ようとも』
7/29/2024, 12:25:50 PM