私の両親はともに文化人類学者で、双子を身ごもったと分かった時点である実験を思いついた。
それは、「愛情」に関する実験。
99.9%同一のDNAを保有する一対の人間どうしに、同じ環境下で違った刺激を常時与えていくと、どのような影響が及ぶか。
わが子をもって、解明しようとした。
姉には愛情をふんだんに注ぎ、妹の私にはそれを削いだ。もちろん、ネグレクトやDVとまではいかない。必要最低限の声がけやケアはしてくれた。でも、あきらかに、親の無償の愛というようなものを、私には一度も見せなかった。冷たい言葉、素っ気ない反応。病気になっても病院に連れて行ってもらったことはない。薬を与えられるのがよいところ。それが15年、継続された。
--実験結果は、火を見るより明らかだった。はじめから。
私は高校受験に失敗した日の夜、家に火を放って両親を殺した。姉は、寄宿舎のついた有名私立中学へ行っていたので助かった。
いや、私が助けた。
姉にはこのまま一流の高校、大学へ進学してもらう。有能な姉のことだ、できるなら法曹の道に進み、司法試験を突破してもらおう。
そして、法廷で私の弁護をしてもらうのだ。
肉親の弁護って、確かできたはずよね? 今からその日が楽しみだわ……。ねえ、父さん、母さん。
#愛情
11/27/2024, 9:22:48 PM