物憂げな空
一つの点を基準とした穏やかな回転対称が表す三角形が、望遠鏡も準備も何もしていない田舎風景の夜空の中で、やけにくっきりと目立って見えた。
観衆は眼下の夜桜を排斥し、ただただ上を見上げている。目が合った気がした。
古めかしいカビの匂いがほのかに漂うホテルのベランダで、備え付けてあった缶ビールを開けた。建物の隙間から、暗い桜が風に揺れているのが見えた。
首元にまだ残っている煙草の匂いと、開けた缶ビールの新鮮な横顔が、背後の回転ベッドに置いた鞄と吸い殻を、そしてそれを彩るピンクの間接照明を忘れさせてくれる。
観衆は思い思いの写真を撮っている。ふとスマホのアルバムを見返してみる。特段面白いものはなかったので、もう一度視線を外に移した。
花火が上がった。どよめきが黒い空に載せられた。園児の持った絵筆が、一心不乱に書き殴ったような花火だった。静かな花火だった。観衆の目的は星空ではなかった。
缶ビールの、最後の一滴を口に落とした。
隣の工房で新たに生まれたオルゴールが産声を上げる。ずっとどこかで鳴っている周期的な異音が、静かに肯定してくれた。
2/25/2026, 11:49:42 PM