ふらりと入った雑貨店には、いくつもの皿やマグカップなどが並んでいた。
全国各地の作家さんたちのさまざまな器が並ぶ中で、コロンとしたフォルムの白い小鉢に惹き寄せられた。
真っ白ではない白、ところどころに見える地の色…飾り気のない力強さと優しさが感じられた。
北海道の陶芸家さんの作品で、大地に降り積もる雪をイメージしている、と店員さんが丁寧に説明してくれた。
探している食器があるというわけではなかった。
そもそも一人暮らしだし、料理が得意というわけでもないので、どちらかといえば、必要最低限の食器があれば十分だと考えるタイプだ。
それでも、小鉢を一つ買って帰った。
使い始めてすぐに、ちょっとした窪みが実は、使いやすくなるためのさりげない気遣いだと知る。
その日から、今まで興味のなかった食器を気にして見るようになった。
今更ながら、陶磁器といっても、模様が入っていたり、少しずつ色の出方が違ったり、本当にいろいろあるということを知れて、何だか楽しみが増えた。
そして私は気がついた。
あの小鉢をきっかけに食器を集めたいのではなく、あの小鉢を作った作家さんの食器を使いたいのだということに。
心地よく晴れた日曜日、あの雑貨店へ足を運んだ。
真っ白ではない白い器の中に、前回はいなかった白い鳥の形をしたお皿が置かれていた。
『身近な人の毎日が愛に溢れ、心に平和が続きますように…そんな願いが込められた作品です』
添えられた手書きの商品説明には、こう書かれてあった。
大皿というほどではないサイズ感。だけど、置く場所がない。
何より、私にはこのお皿に盛り付ける料理が思いつかない。
結局、何も買わずに帰宅したが、家に着いてからもずっと、あの白い鳥が頭から離れなかった。
やっぱり買いに行こう。
明日仕事が終わったら、すぐ買いに行こう。
どこに置くかは、買ってから考えよう。
次の日の仕事終わり、急いでお店へと向かったが、他の誰かの手に渡った後だった。
たぶん、今じゃなかったんだ。
愛と平和を願っているお皿を、こんなガツガツした感じで手に入れちゃだめなんだ、きっと。
少し強がって、呟いてみる。
自分のその声に深く相槌を打ちながら、前へと向き直す。
ひとまず部屋の掃除をしよう。
あの白い鳥のお皿をいつでも迎え入れることができるように、少しずつ準備を始めてみよう。
【愛と平和】
3/11/2026, 7:55:07 AM