白糸馨月

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お題『岐路』

 今、俺はまさに人生の岐路に立っている。
 そもそもメンバーを女性だけでかためたのがいけなかった。俺が女好きうんぬんじゃなく、なりゆきでそうなっただけだ。
 俺が勇者として旅に出ると言った瞬間押しかけてきた幼馴染、道中助けてあげた半獣の元奴隷、クエストで一人で戦っていた亡国の女騎士。たまたま俺についてきたのが女だけってだけだ。
 それでもうまくやってきたつもりだった。だが、新しい海がよく見え白い建物が多い港街に来て、「勇者様もそろそろ年頃だろ。うちの娘はいかがかい?」と宿屋にいきなり豪商が現れて、見合いを打診されたので旅の仲間の女達が険悪になっている。
 三人の女が俺をめぐって喧嘩になったのだ。みな、俺に迫って口々に言う。

「あんたのことを昔から一番知ってるのは、あたしなのよ?」
「ご主人様ぁ、ボクとツガイになってくれるんじゃなかったの?」
「共に歩もうと、この手を取ったのは貴様ではないか?」

 もうその形相が怖くて、でも目をそらすことも出来ない。そんななか、扉が開く音がする。白のワンピースに身を包んだ可憐な女の子が現れた。
 女たちの目線が彼女に行く。

「はじめまして、父から話を聞きました。貴方が私の夫になる御方」

 ご令嬢は、女達を気にせず俺のそばに寄る。

「こんなにたくさんの女性に言い寄られるなんて、本当に勇者様は魅力的な方ですね。私、気に入りました!」

 ご令嬢が俺の手を取る。三人の女が一斉に俺を睨む。

「あんたこんなどこの馬の骨とも知らない女の手を取るんじゃないわよ」
「ご主人様、ボクだけ見ててよ」
「貴様、騙したのか」

 仲間たちが口々に言う中、令嬢は「あら」と口火を切る。

「皆様、勇者様を困らせないでくださいませ。勇者様を幸せに出来るのは私です。それだけの資産を保証できるのは私をおいて他にいないのではなくって?」

 彼女たちの間に火花が散っているのが見える。女のバトルに巻き込まれてもう嫌な感じの汗しか出ない。正直、今人生の岐路に立たされているといっても過言ではないが、どれを選んでも地獄。
 俺は四人の女に迫られて、嬉しくないどころか、この場から逃げたくて仕方がなかった。

6/9/2024, 1:56:26 AM