雫って聞いたら、何を思い浮かべる?
「うーん、涙とか、雨とか」
「汗、とかもいいんじゃない?あと、ペットボトルとかで表面が濡れるやつ……結露、だっけ?」
そうそう、あとは……と無限に続く連想ゲーム。
物語を書く仕事をしている貴方の、なにか役に立てないかなと思って、このゲームを提案したのだ。楽しくてお酒も進むし。
「最近手進まなかったからさ、とても助かるよ。やっぱり、考えたり、想像したりって、楽しいね」
貴方は小さい頃から変わらない、純粋な笑顔を私に向けた。
「そうだね。でも、雫か……もう思いつかないや」
「うーん、じゃあ雫ってどんなイメージ?」
「えぇ?イメージか」
雫、パッと思いつくのは、雨と涙。捉え方によっては、雨も涙も、明るいイメージにはなる。でも、第一印象はやっぱり、暗くて悲しい。
「暗くて、悲しい……かな」
「へぇ。ちなみに私は、綺麗とか、美しいとかかな」
あまりマイナスなことを口に出さない、貴方らしい回答だと思った。
すると、貴方は窓を見た。
外では、しとしとと雨が降り始めていた。
「あ、雨」
「ほんとだ」
最初は穏やかに降っていたのに、段々と地面を強く打ち付ける音が聞こえてくるほど、強い雨になっていった。
「力強い……」
「ん、どうしたの?」
「いいや、なんでもない。いいアイデア思いついちゃった」
そう言って、貴方はスマホを取り出して人差し指を滑らせた。そして、とんとんとリズム良く文字を打っていた。
私は、何も言わず、その姿を見ていた。
4/21/2024, 11:12:09 AM