その日は暑かった
それもそうだ、この炎天下
水も財布も何一つだって持たず飛び出してきたのだから
理由は、取り立てては特にない
強いて言うならなんだかそうしたかったからだ
疲れたんだろ、色々と
街を当て所もなく歩く
知人の家の前を過って、公園の蛇口で水飲んで、畑に植わる作物を眺めて、行ったことない場所ほっつき回って
いつも傍にある筈の全ての、知らない見方を知った
涙も底に背負った侘しさも、乾いていた
一つ、二つ、そして三つと橋を渡ったその時
沈み往く夕日を見た
視界が開けた気がした
川に反射していた、零れ落ちた今日の終わりが
白昼に始めた逃避行が
眩しく終わるのが辛かった
そんなあの日の景色の話
7/9/2025, 8:25:33 AM