明日に向かって歩いていく、でも
ファイト。オー。
ファイト。オー。
我が野球部は創部15年を数える。県内では強豪と呼ばれていた時代もあり、県大会ではベスト8やベスト4は常連で準優勝した年もあった。ただ、今は初戦を突破できない弱小チームになりさがっている。
「集合。監督さんが春の大会で引退することになった。監督さんか少しでも長く我が野球部とともに勝ち進めるように頑張っていこう。解散。」
「はい。」
監督さんは創部以来、ずっと野球部の監督として部員たちを指導してきた。時には激を飛ばす古い考えの方の人だけど、弱小となった今のチームも見放さずにいてくれる優しい大人だ。監督さんのためにも必ず1勝したい
1勝すること。それが野球部の目標。
明日に向かって歩く、でも、それは難しいことの連続だ。
たかが1勝。でも、弱小チームには大きな壁となる。
結局、春の大会の予選も1勝もできずに初戦敗退で終わった。悔しかった。負けることが常態化していた俺たちは、監督に1勝もプレゼントできなかった。今さら遅いが悔し涙が止まらない。もう負けるのは辞めだ。負けたくない。
4月になると中学ナンバーワンのスラッガーが入部してきた。監督さんのお孫さんだ。監督はニコニコしながら練習試合の応援に来る。監督としては勝利をプレゼントできなかったが、応援に来てくれる元監督へ勝利を見せるチャンスがまだある。
俺たちはチャンスに恵まれたのだ。
このチャンスを逃す訳にはいかない。
そして、中学ナンバーワンだか知らないが1年にだけ頼る訳にはいかない。どの試合も俺たちの試合だ。負けは辞めだ。
でも、なんで元監督の孫はなぜうちの高校へ来たのだろう。きっと他の強豪校から推薦もきていただろうに不思議だ。甲子園にでる確率の低いこの高校に来る意味があるのだろうか。
「お爺さん。え〜と。元の監督があのチームはいいチームだ。負け癖が抜ければ強くなるチームだ。お前が勝つ楽しさを教えてやってくれて言ってたし、ここの人たち練習楽しそうで俺と同じで野球が好きなだろうなぁ。と思ったらここの試験受けてました。」
なんだう。なぜか涙が出てきた。
元監督さんがチームをそんなふうに見ていてくれて嬉しかったのとその孫が手を差し伸べてくれたことが嬉しかった。
俺たちは3年。今年こそは1勝する。
1/20/2025, 9:58:22 PM