「これは眩い光しかない世界を描いた、コレタカ氏の代表作で——」
無色の世界。そう題された作品は、何も描かれていないキャンバスのように見えた。少なくともテレビの画面で見る限りでは、本当に何も描かれていないようだった。
これはあれか、裸の王様みたいなものか。それとも肉眼で見ればわかる何かがあるのか。
僕ならそれを黒く塗り潰す。一色しかない世界には色の区別が必要ないから、それは無色にも等しいと。
有るものが無いって、少し哲学的かな。でもそれを言うなら光だってきっとそうだ。光がなければ色なんてないし。
そんな風に考えているうちに、テレビは次のニュースへと切り替わっている。色とりどりの派手な祭りの賑わいが映し出されて、僕はため息を吐く。切り替えがはやすぎる。
きっと人々はコレタカ氏の絵のことなんてすぐに忘れるのだろう。名をあげてもそうなのだから、僕の作品なんて存在しないも同然だ。
でも、それでも僕は筆を取る。
無から有を生み出すべく。この世界に何かを、爪痕を残すべく。
4/18/2023, 12:07:17 PM