kiliu yoa

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祇園精舎の鐘の声…。

私から数えて六代前の当主は、平家物語を好んで読んでいらしたと、

ひいおじいさまが教えてくれた。

私も中学生の時、習ったので少しだけ覚えている。

諸行無常、か。

私の家は、元華族で富裕層。

決して高いとは言えない家格だが、家筋は良く、権威が在る。

代々皇家とは主従関係であり、天皇に仕える家の中では最も古い。


正直、私には荷が重すぎるし、身の丈に合っていない。

しかし、私は独りでは無いことを知っている。

私には、当主補佐に副当主も居る。

先代も、先々代も、四代前まで生きている。


『荷が重ければ、皆で背負えば良い。』

ひいおじいさまが、私に教えてくれた。

私が当主を継いだ日、

鐘の音が鳴り響く最中、

微笑みながら、そう仰せになった。


だから、私は思い出す。

鐘の音が聞こえると、

平家物語の冒頭と、ひいおじいさまの言葉を思い出す。

その度に唱え、自分に言い聞かせる。


そうすると、不思議と気持ちが軽くなった。













8/5/2024, 3:23:44 PM