白井墓守

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『伝えたい』

伝えたい、この気持ち。
伝えたくない、この真実。

○○○

愛している人が居る。
同じクラスの女の子だ。

快活そうなショートヘアに、くりくりとした目。
リスのように小さな体と、鈴を転がしたような声。

愛している、と伝えられたらどれだけ良かっただろう。

「なぁ、あの子って可愛いよな」
「あーたしかに。お前、告ってこいよ」

クラスの男子達の雑談が届く。
羨ましい。
どす黒い気持ちが溢れそうになって、強く唇を噛み締めた。

くるりと、あの子が私の方を向いた。

「先生! プリント集まったよ!!」
「……いつも、ありがとう」
「いーえ! 先生もお仕事、頑張ってね!!」

太陽のような眩しい笑顔を浮かべながら、あの子は去っていく。
私の元から、簡単に。

「なぁ、あの子って先生とちょっと似てね?」
「はぁ? いや、性別とか髪色とか違うじゃん」
「あー。そっか、そうだよなぁ。なんかちょっと目鼻立ちが似てる気がしたんだけど」
「んなことより、はやく帰って最新ゲームしようぜ!」
「おう!」

凍ったように体を固まらせた私の側を、男子達が駆け抜ける。

あぁ、どんなに言えたら良いのだろう。

あの子は、私の異母妹だよ。と。
私はあの子を本当に愛しているんだ、と。

——半端な気持ちで、可愛い妹に手ェ出すんじゃねぇクソが。と。

言えたら良かったのに。

伝えたい、この気持ち。
伝えたくない、この真実。

あの子はきっと、信じている。
今の父親と血が繋がっているって信じている。

だから、今はまだ。
そっとしておこう。

……今は、まだ。


おわり

2/12/2026, 1:03:29 PM