涙想々

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 わたしの初恋の人は、血のつながらないお兄ちゃん。いつも優しく笑っていて、少し冷えて骨張った手で頭を柔らかくなでてくれる、この世で一番大好きなお兄ちゃん。周りの人からは、仲の良い兄妹ねってよく言われるけど、わたしはそんな関係に終わらせる気なんてない。
 わたしは本気でお兄ちゃんに恋してる。お兄ちゃんと結婚するんだから。
 そのために、立派なレディになる訓練は欠かさない。朝起きたら誰よりも先にお兄ちゃんにおはようを言うし、身支度だって素早くする。女の支度には時間がかかるなんて言うけど、そんなことでお兄ちゃんを待たせたらレディの名折れだから。
 それから、ご飯もたくさん食べるの。お兄ちゃんの作ってくれるご飯はいつも温かくて、美味しくて。それに、たくさん食べるとお兄ちゃんは笑ってくれる。美味しいって笑顔を向けると、お兄ちゃんも嬉しそうに微笑むの。あの笑顔が最高のスパイスだと思う。
 他にもたくさん、素敵なレディになるためには色々なことを心がけないといけない。
 保育園のみんなはまだまだ子どもで、一緒にはできないけどそれは仕方ないし。お母さんは、あんまり帰ってこない。お仕事で忙しいんだよって、お兄ちゃんは言ってた。
 働いてる女性もすてきだって思う。自分の力でも生きていける力強さを感じるから。
 それに、お母さんは帰ってくるとぎゅって抱きしめてくれる。お花のいい香りに包まれて、すごく気持ちがいいの。わたしと双子の弟の和を一緒に包み込むとき、お母さんの懐はぐっと大きくなるみたい。お兄ちゃんはもう大きいからか入ってはこないけど、いつもちょっと遠くから見つめてる。その姿が大人だなって思うけど、でもやっぱりお母さんからの温もりは捨てられなかった。もうちょっと、子どもでいてもいいかなって、そのときだけは思っちゃう。わたしもまだまだってことね。
 はやく、早く大人になりたい。いつも見守ってくれるお兄ちゃんの隣に並ぶために。

 ⸺子どものわたしが知らない"みどりくん"を見つけるために。

5/7/2023, 1:51:32 PM