川柳えむ

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「物語を終わらせに来た」

 突然目の前に現れた少女が私に向かってそう告げた。
 ――何? 誰? 厨二病?
 その少女をポカーンとした顔で見ていたが、気が付いた。
 この子、とても見覚えがある。この子は、そうだ、私が書いた物語の主人公だ!
 え、何? どういうこと? 夢?

「全然物語を完結させないで! こっちは何年待ったと思ってるの! もういい加減許せない!」

 少女がこちらに迫ってくる。
 捕まったらまずい? 最後まで無理矢理書かされるの? そもそも今どこで止まってたっけ?

「あなたを殺して、物語を終わらせる!」

 ええええええええぇぇ!?
 いやいや、それなら無理矢理にでも書いて終わらせるよ! というか、それじゃ、物語止まってる現状は変わらなくない!?
 固まっている間に、彼女はもう目の前まで迫ってきていた。そして、武器である短剣を構えて振りかぶる。

「覚悟ォ!」

 ――――……はっ!

 汗だくで目が覚めた。
 夢……か。さすがにそうか。当たり前だ。
 ゆっくり体を起こす。ふと、何かが手に当たった。
 そこには、見覚えのある短剣が落ちていた。

 もしかして、私と彼女の、新しい物語が始まってしまったのかもしれない。
 ……いや、そんな物語は始まらせない!
 その前に彼女の物語を終わらせようと、慌てて私は机に向かった。


『物語の始まり』

4/18/2025, 10:41:04 PM