学校へ続く見晴らしのいい一本道の通学路。
歩いていると、青い風が横切った。
「里美!忘れ物!」
私の目の前に現れたのは、青いエプロンを着たママ。
ママが私に差し出したのは、ランチトート。
どうやら、家を出る時に忘れてきてしまったらしい。
「ありがとうママ」
ママからランチトートを受け取る。
ママは元陸上選手で、オリンピックに出たことがあるらしい。
青いユニフォームを着ていて、すごく足が速かったから青い風と呼ばれていたそうだ。
ママは走るのが速いのに、娘の私は逆に遅い。
どうして私はママの遺伝子を継がなかったのだろう?
神様は意地悪だ。
「それじゃ里美、気をつけてね」
ママは家へ戻らず、そのまま真っ直ぐ進んでいく。
「ママ!どこ行くのー!」
「このままランニングしてくるー!久しぶりに走ったら燃えてきちゃった!」
前を向いて走りながら、私に手を振るママ。
あっという間に姿が見えなくなる。
青い風は、まだまだ現役だった。
7/4/2025, 10:45:19 PM