—初めての冬—
『これからもっと寒くなるだろうから、冬支度しっかりしなさいよ』
朝起きると心配性の母からメッセージが届いていた。
今年から大学生になり、実家を離れて一人暮らしを始めた。今年は初めて一人で冬を過ごす事になる。
「あれ買っといて良かった」
この前、家電量販店で買っておいたものがある。押し入れに突っ込んだ箱を取り出して、中のものを組み立てる。
「やっぱり冬と言えば、こたつだよな」
部屋の中心部に置き、スイッチを入れると、じんわりと体が温められる。
買って良かった、とすぐに思った。
そのまま少し眠ってしまった。
次に起きたのは、玄関の扉が開けられた時だった。
「ユウキ、ちゃんと冬支度してる?」
母が来た。この家は実家からそれほど離れておらず、たまに抜き打ちで生活をチェックしに来る。
「うん、もちろん」
眠い目を擦り、そう答えた。
部屋を一周見渡すと、母は気づいた。
「あんた、こたつ出しただけでしょ」
母の言う通り、俺はこたつしか出していない。夏服も掛けっぱなし、カーペットも夏用、扇風機もまだしまっていない。掃除も最近は怠っていた。
そこから母の指揮のもと、三時間ほど冬支度をやらされた。
「次はこんなことがないようにね」
そう言って母は家を出て行った。
冬支度がこんなに大変だとは知らなかった。今までこれを母が一人でやっていたと思うと、やっぱり母は偉大だな、と思った。
お題:冬支度
11/7/2025, 7:04:30 AM