シオン

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(権力者が集団であることがバレた後)
「この世界って、みんなこんな感じで洗脳されている訳じゃないんだろう?」
「ん、あぁ⋯⋯うん」
 相変わらず話の切り出し方が唐突で、前後のつながりがミリもないなぁ、なんて思いながらそう答えた。だいたいさっきまでは、花が綺麗だが誰が育ててるのかみたいな話してなかった?
「じゃあ、他の場所にいる住人は違ったりするかい?」
「ああ、うん」
「よかったら教えてくれないかい?」
 ヤダって言ったら引き下がるみたいな言い方をしてるがこいつに引き下がる気は一切ない。そういうズルい奴なのだ、こいつは。
「子供、みたいな人になっちゃうとか」
「⋯⋯⋯⋯子供、みたいな人?」
「ん。なんか性格とか、場合によっては見た目まで」
「へぇ。子供」
 自分で聞いたわりに興味無さそうだな、お前!
 まぁ、ボクは半分子供みたいなもんだし、演奏者くんもワガママな性格があったりして、わりと子供っぽいからあんまりよく分かんないのかもしれない。
「子供になったら、何も出来ないね」
「⋯⋯⋯⋯例えば?」
「きみを口説いてみるとか」
 またか、演奏者。
 ココ最近君はそんな話しかしないけれども、ボクは正直呆れてんだよ。
「ボクは君に口説き落とされたりしないよ」
「⋯⋯⋯⋯僕が頑張ればできない話じゃない」
 そんな話し方しかできないのか、演奏者くんは。
 だいたいボクは本当に口説き落とされたりしない。なぜならもう、君のことを好きだから。ここでさらに落ちるなんて馬鹿な話はないんだ。
 風が吹いて、君の短い髪がなびいて、ボクはその横顔にまた、好きだななんて思ってしまった。

5/12/2024, 4:09:45 PM