NoName

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 明日はずっと楽しみにしていたイベントの日だ。
 オタクの、オタクによる、オタクの為のイベント同人誌即売会だ。
 既に銀行へ行き、大量の千円札と小銭の準備はOKだ。……しっかしこの千円札の束、お金持ちになった気分になるね! 実際は五万円でしかないけどね!
 ウキウキで準備をしていたら、スマホにラインの着信があった。
 一緒に行く予定の友人からだ。
 嫌な予感がする……。彼女は推し変が激しい上、好きな作品自体もコロコロ変わる。

 恐る恐るラインを確認し、見た直後スマホをベッドに向かって「そぉい!」と放り投げてしまった。
『ごめん、コミケへは行けません。
 いま、シンガポールにいます。』
 嘘つけぇぇ!!!
『(嘘です)』
 知ってるわ!
『(コミケ行けないのはほんと)』
 まじか! まあこっちも、あんたは来ないかもなとは思ってたから、いいっちゃいいんだけど。
 にしても急だな⁉︎
『今までと違うジャンルの同人誌を、私は作っています』
 出たな、推し変!
『本当は、コミケが恋しいけど、でも……
 今はもう少しだけ、知らないふりをします。
 私の作るこの同人誌も、きっといつか、誰かの萌えの糧になるから。』
 ……このヤロウ。最後までパロを貫き通しやがった……。

 本が出来たら見せてね、と返信し、『りょ』と返事をもらい、私はまた明日の準備の続きに取り掛かるのだった。


  お題『君からのLINE』

9/16/2024, 3:38:10 AM