ほろ

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「なんやお前、こいつ俺のやぞ」
「あー、すんません。見えてませんでした」
ナンパ失敗。かもしれない。ギラギラとした闘志を含んだ眼で、ぎろりと睨まれる。間にいた女の子は俺と彼を交互に見て、居心地悪そうに肩をすくめる。
「見えてませんでした? 言い訳ヘタクソやな。正直に言うてみい、わざと俺の目の前でナンパしましたて」
「わざと貴方の前でナンパしました」
「ほんまに言う奴がおるかアホ」
溜息をつく彼。呆れたのか、諦めたのか。
彼は先帰り、と女の子を帰す。何度かこちらをチラチラ見ながら、女の子は帰って行った。

ここまで想定通り。

「お前、喧嘩売ったんやから覚悟できとるんやろな?」
「はい」
「よぉし、上等や。こっち来い」
「あの」
ぐるんぐるん腕を回す彼を見据えて、俺は笑ってみせる。
「もし俺が勝ったら、俺と付き合ってくださいね」
「は?」
回っていた腕が止まり、彼はお化けでも見たかのような顔をした。
最初から、俺の目的は彼だった。そのために女の子をナンパしたのだ。もう二度と離さない。彼は忘れてしまっているだろうけど。
「約束」
「するかボケ!」
きっと勝って、思い出させてあげるから。約束。

3/23/2024, 12:46:15 PM