恋か、愛か、それとも:
ふと筆をとりたくなった。
何の決まりもないのだが、まっさらな白い紙にインクを躍らせたい瞬間がある。それは思考の具現化だったり、持て余す想いの吐露だったり、きたる翌日のあらすじを思い描くことだったりと様々で、時間を忘れて机に向かうこともある。
絵心はさっぱりだし、整った字も書けない。それでもこの衝動に駆られている時間は、見栄も虚勢も余分なへりくだりもない、微塵の飾り気もない自分が投影されているこの瞬間は、知らず心臓を昂らせるのだ。
私がこうであるように、誰かにとってこれに代わる何かがそこかしこにあるのだろう。理解の及ばぬ者には嘲られるかもしれない、まっすぐで柔らかな、それでいて確かな芯を持つ何かが。
その名を知ることはきっとないかもしれない。それを的確に表す言葉がこの世に存在するのかさえ知らないから。それでももし、この情熱を何かと問われるなら何と答えるだろう。そうだな、例えるならば。
―――恋か、愛か、それとも
6/4/2025, 11:38:45 AM