かたいなか

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「4月16日のお題が、ほぼそのまんまよ。読点が付いてるか付いてないかの違いくらいさ」
このお題がまた巡ってくるとはねぇ。某所在住物書きはポツリ呟き、4月16日の題目、「ここではない、どこかで」で投稿した過去作品を確認するため、スマホをスワイプし続けていた。
「2ヶ月も前のお題だから、ドチャクソ長々さかのぼって、『あった4月16日のお題だ』って読みそうな方、少ないだろうなってハナシ」
過去作読む方法がスワイプ一択で、昔であれば昔であるほど辿るのが面倒なところ、その過去作をコピペしてもバレなそう。
物書きは閃き、なおスマホの画面をなぞり続けて……
「にしても、過去作確認するの、苦労オブ苦労……」

――――――

最近最近の都内某所。不思議な不思議な稲荷神社と、「ここ」ではない「どこか」のおはなしです。

「お庭に、知らないニオイのウサギさんがいる!」

敷地内の一軒家で、化け狐の末裔が家族で暮らすその稲荷神社は、草が花が山菜が、いつかの過去を留めて芽吹く、昔ながらの森の中。
時折妙な連中が芽吹いたり、頭を出したり、■■■したりしていますが、そういうのは大抵、都内で漢方医として労働し納税する父狐に見つかって、『世界線管理局 ◯◯担当行き』と書かれた黒穴に、ドンドとブチ込まれるのです。

「やいっ、知らないウサギさん!ウカノミタマのオオカミサマの、ご利益ゆたかなお餅いかがですか!」

多分気にしちゃいけません。きっと別の世界のおはなしです。遠いどこか誰かのおはなしです。
ですが今日も何やらかにやら、稲荷神社に妙な連中が現れた様子。
神社在住のコンコン子狐、神社の庭で、黒い耳飾りに黒い爪飾りをつけた、黒いウサギを見つけました。

「そうよ。俺は『知らないウサギ』」
不服そうな抑揚と表情で、黒いウサギは言いました。
「『この世界』ではない『どこか』から来た、悪いウサギだ。……畜生それだけさ。どれだけ『ここ』で悪逆非道の限りを尽くしても、どれだけ『ここ』で恐ろしいイタズラをしても、その先には行けない。
『ここ』ではない『未来』では、俺のことなんざ綺麗サッパリ忘れ去られちまうのさ」
畜生、畜生。俺だって、「別の世界」ではガッツリ設定も名前もある人間だってのに。「この世界」ではただのチョイ役にしか過ぎないんだ。
ウサギはギーギー毒づいて、子狐を威嚇しました。

「ウサギさん、捻くれてる。やさぐれちゃってる」
「うるせぇ。お前に俺の何が分かる」
「ウサギさん、お餅食べなよ。ウカサマのお餅食べれば、元気になるよ」

ウサギさん、新商品、ウナギの蒲焼きお餅どうぞ。
俺はウサギだぞ。お約束的に、そこはニンジンだろ。
父狐が庭にやって来て、ウサギを鍵付きのキャリーケージに入れ、『世界線管理局 脊椎動物・草食陸上哺乳類担当行き』と書かれた黒穴に送り出すまで、
子狐はウサギの吐く毒を、神社のご利益あるお餅を2個3個、もっちゃもっちゃ食べながら、お利口さんに聞き続けておりました。
おしまい、おしまい。

6/27/2023, 1:43:59 PM