「収斂進化って知ってる?」
「しゅうれ……なんだって?」
部屋で漫画を読んでいたと思ったら、急に話を振られた。彼女は顔を上げず、漫画を読みながら話を続ける。
「種類的に全く関係ないのに、似たような進化をした生き物のことだよ。例えばサメとイルカ。ハリネズミとハリモグラ。アザラシとアシカ」
「ほうほう」
確かに似ている。サメとイルカはわかるが、他のは別種だったのか。知らなかった。
俺は彼女に体を向けるが、彼女はまだ漫画から目を離さない。
「ハチドリとスズメガ」
「ん?」
「セミクジラとフラミンゴ」
「……似てるのか?」
「ティラコスミルスとスミドロン」
「わかるかーッ!!」
最後のツッコミでやっと彼女は顔を上げて、にやりと笑う。
「そっくりだよねえ」
「いや、最後のとかどんな動物かさっぱりわからなかった」
彼女は満足そうに近付くと俺を押し倒して腹を枕にし始めた。そしてまた漫画を読み始める。
「そっくりなのに仲間になれないなんて悲しいねえ」
「……まあサメとイルカが和気あいあいとか見たことねえな」
腹に乗った頭を撫でてやると、ふふふ、と笑い声が聞こえてくる。
「宇宙人も知らないうちにヒトに見えるよう収斂進化してたりして」
「……SFホラーなら俺かお前が宇宙人なやつな」
そうしたら彼女とは敵対し殺し合うんだろう。サメとイルカが仲間になれないように、縄張りを分かち合えないように。
だから、黙っていよう。相手に知られさえしなければ、同種だと思われている限りは、俺たちは平和に過ごせるのだから。
【仲間になれなくて】
9/9/2025, 10:01:52 AM