沈む夕日ただ、足を滑らせただけだった。最後というにふさわしい場所で、見渡した世界があまりにも美しいことに気づいた。あんなにも憎んでいたのに、あんなにも大嫌いだったのに。眼下に広がる世界はただただ美しくて、敵でも味方でもなかった。何かを掴みたくて、手を伸ばし、空を切る。そのとき、風に煽られて、足を滑らせたのだ。そんな気なんて、もうなかったのに。視界の端に映った沈む夕日が上って見えたのはきっと私が逆さまだったから。
4/7/2023, 2:48:25 PM