『たくさんの想い出』
母に抱かれながら食事をしている
自分が何を想っていたのか
母がなんと言葉をかけてくれていたのか
他に誰がいたのか
何を食べていたのか
何も思い出せない
それでも温かな気持ちは思い出せる
そんな、一番最初の想い出
新潟のゲレンデで父と共にソリに乗っている
自分がどんなウェアを着ていたのか
父がどんなウェアを着ていたのか
どんな寒さだったのか
何も思い出せない
ただ、青いソリに乗り、サングラスをした父がいて
とても楽しかったことは思い出せる
そんな、幼少期の想い出
小学校で友人と喧嘩している
何故喧嘩になり、殴り合ったのか
他に誰がいたのか
思い出せない
しかし、殴り合いをする興奮と痛み
その後、仲直りをしたであろうこと
その友人とはいまでも親友であることはわかる
そんな、少年期の想い出
海辺で女の子と座っている
どういう経緯でそこにいたのか
覚えていない
ただ、その子が初めて付き合った人で
それが切ない結末に終わったこと
その後の人生で交わることが無いこと
少しの胸の痛みがあることは覚えている
そんな、青年期の想い出
家で妻と喧嘩をしている
家の片付けをするとかしないとか
そんな些細なことが原因だ
いつものことだ
いい加減疲れを覚える
それでも仲直りし、一緒に夕食を食べた
申し訳無さと、少しの不満とが残る
そんな、昨日の想い出
たくさんの想い出がある
たくさんの想い出の一つ一つ
それらがいまの自分を形作っているのだろう
本当に?
この想い出はホンモノ?
もし、たくさんの想い出達が
全ての物が自分の脳が作り出した幻想だとしたら?
何が本当の想い出で、何が本当の自分?
誰にもわからない
僕にもわからない
虚飾の想い出
11/19/2022, 7:38:31 AM