「またいつか書けると思ってる?
多分君ね、使い果たしちゃったんだよ。
才能じゃないよ。
君が一番分かってるよね。
君に才能なんてあるわけない。
君が持ってたのは、運。ちっぽけな運ね。
それが尽きたってだけ。
自分で自分のこと賢いと思ってるんだろ?
なら諦めた方がいいって分かるよな。
他にやりがいのある仕事たくさんあると思うよ」
憧れだった、あの才気あふれる作家に言われた辛辣な言葉は、今でも俺の耳にこびりついている。
あれは呪いか?
だとしたら、今でも十分その効力は絶大だ。
一度地方紙で貰った評価(それもたまたまだったに過ぎない)にしがみつき、それっきり鳴かず飛ばずだった。
甘えていた俺。逃げてばかりいた俺。
あの人の言葉は、そんな俺を打ちのめすのに十分だった。
痛いほど真実だった。
あの人の言う通り、才能もなく、ちっぽけな運を使い果たした俺には何もない。
それでも俺は、あの人の言葉を墓標にはしたくない。
まだ断片しか見せてくれない物語の先を、俺が見たいから。
俺の中にまだ、語りたい声が聞こえてくるから。
俺はまだ物語を書くことをやめてないよ先生。
悪かったな、賢くなくて。
7/23/2025, 1:24:46 AM