氷の城に一人きり。
目に映るのは一面の銀世界。
やっと見つけた愛し子は再び奪われた。
あの子さえいれば、私はまだしも人でいられたのに。
たった一人。あの子さえいれば良かったのに。
あの方法しか知らなかった私に、他にどんな手があったというのだろう。
愛し方など誰も教えてくれなかった。
氷の世界に生きる私は、人の愛し方を知らなかった。
私の愛は人の世界とは相容れない。
だからせめて、一人だけでいいから私の愛を受け入れてくれる存在が欲しかった。
でも、もういい。
もう人の世界と折り合おうとは思わない。
私はこの銀色の世界で一人で生きる。
どうしても私の存在が許せないなら、この雪原を越えて来ればいい。
全部全部、凍り付いてしまえ。
END
「雪原の先へ」
12/8/2025, 5:03:42 PM