渚雅

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どんな小さなことでも,つまらない日常でも "シアワセ"を見つけられるそんな存在がいた。


例えば雲ひとつない空が綺麗だとか,例えば見知らぬ花が咲いていたとか,例えば水溜まりに映る景色が幻想的だとか。道端で猫に会ったとか蝶々が髪飾りみたいだったとか。

例を挙げればきりはないけれど,いつだって笑顔を絶やさないそんな人物がいた。花のように微笑んで不条理も不平等も綺麗でない物なんか知らないような,穢れひとつない そんな誰かが。


正直に言えば,羨ましくて妬ましくて目障りだった。不幸など見えもしないような箱入りのお人形さんが。苦労もせずに与えられたものを受け取っているその人物が。

きっと黒く淀んだ感情は慣れるほどにぶつけられてなお表情すら崩さない余裕が。他人を羨むことも荒んだ心にすり減ることもない素直さが。愚直なほどに気高く割り切った精神が憎かった。

あんな風には生きられないから。全てに素直に感謝して楽しんで疑問を持って赦して。当たり前を成し遂げて,当たり前を抱き締めて。日々を一時刹那をも無駄にしない生き様が眩しかった。



……だから。

些細なことでもいい。ほんの少しでいい。貴方に近づけたらと そう願った。





テーマ «些細なことでも»

9/3/2023, 11:33:00 AM