G14

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晴れていた空が急に曇りだし、すぐに降り始めた。
念のために持っておいた折り畳み傘を広げる。
遠くの空を見ると、雨雲はなく降っているのはこの辺りだけのようだ。
今朝見た天気予報を思い出す。
「トコロニヨリコウウって、本当にあるのか」
あれ、責任逃れの常套句だと思ってたよ。
そのまま歩いて学校に入る。

下駄箱で靴を脱いでいると、友人が走ってくるのが見える。
「セーフ」
「アウトだよ」
友人のボケに律儀にツッコミを入れる。
友人は直視できないくらい光っていた。
「あーあ、ピカピカじゃん。天気予報で“光雨”って言ってたじゃん」
「行けると思ったんだけどな―」
「あんたいっつもそれじゃん」
「そういうあんたも、ところどころ光ってる」
「どうよ。光、零れるいいオンナだろ」
「すげー。写真あげたらバズるかな」
「おい、SNSにはあげんな」

教室で友人と中身のない話をしていると、チラホラ生徒が登校してきた。
「みんな光ってるね」
「直前まで晴れてたからね。油断してたんだよ」
「けどこれ眩しすぎて授業どころじゃなくなるね」
そんな話をしていると一人の教員がやってきた。
「おい、傘を忘れたマヌケども。シャワー開放するから洗い流してこい」
それを聞いて、クラスメイトたちが我先にと教室を出ていく。
「私も行ってくる」
そう言って友人も出ていく。
さっきまで騒がしい教室が一瞬で静かになる。
急に暇になり、外を見る。
すると外は光雨が上がり、日が差していた。

校庭のところどころが光っている。
光溜まりや光雨に濡れた木が、光っているのだ。
眺めていて、いいことを思いついた。
これを写真に撮ったらきっとバズるはずだ。
スマホを取り出して、より綺麗に見える位置を探す。
満足の行く構図ができたので、ボタンを押す。
取れた画像を見て、納得の行く出来栄えに頷く。

それは窓枠という額縁に収められた風景画。
味気ない校庭を飾り立てる光たち。
木々が優しく光っている。
そして空から差し込む陽の光。
見慣れた場所が、輝やいて見える。

タイトルは、“やわらかな光”。

10/17/2023, 9:07:05 AM