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手ぶくろ

「ゴンギツネの息子、手ぶくろを買いに」

ゴンギツネは、人間に悪戯ばかりする捻くれたキツネの青年でした、「ロッキーチャック」のおばあちゃんの手編みのチョッキを何時も着ているおばあちゃん子の子ギツネと違って、自分を捨てたのか自分を大事に育てなかった親ギツネを怨む可哀想で孤独なゴンギツネは、いつか捻くれて悪戯ばかりしては、人間を困らせて喜んでいる実はとても寂しがりやの孤独なキツネでした。そのゴンギツネは、ある日村の十兵という男が川で釣った魚を逃がしてしまうという悪戯をします、十兵は病気の母親に鰻を食べさせようとしていたのですが、ゴンギツネはその鰻さえ逃がしてしまいました。十兵の母親はそのまま亡くなってしまい、十兵は母親の葬式を泣きながら出していました、それを見ていたゴンギツネは何故だか胸が痛み、自分は母親を憎んでいて、十兵のように病気の母親に好物を食べさせようとしたり、それが叶わず母親が亡くなってしまったからと泣きながら葬儀を出すという気持ちをはじめて知り胸が温かいような苦しいようなそんな気持ちにつつまれて、自分のした悪戯が酷く幼くみっともないことに思えて、考え込みました。償いにとゴンギツネは鰯を盗んで十兵の家に投げ込むも、今度は鰯を盗まれた魚屋が十兵が盗んだと十兵の家に捩じ込だと知るところとなりました。それを見たゴンギツネはこれは酷いことをしたと思い、今度は自分の力で償いたいと朝早くから森へ出て栗や松茸を集めては十兵に届けました、十兵は誰が届けてくれているのか分からずにいたある日、ゴンギツネが十兵の家に入ったのを目撃し、また悪戯か今度は盗みにでも来たのか!?とゴンギツネを追いかけ火縄銃で撃ってしまいます。ゴンギツネか倒れたあとに栗と松茸が転がります、十兵は駆け寄り「お前だったのか…」と問いかける十兵にゴンギツネは目を閉じたまま頷き息絶えました。ゴンギツネは十兵が病床の母親に食べさせようと釣った鰻を盗んだこと盗んだことを盗みで埋めようとしたことを詫びたかったのでした、それに気づけなかった十兵はゴンギツネを抱き上げ詫びました。十兵の火縄銃は地面に落ちて青い煙を天に向けてあげていました。

それから季節は巡りました。あの夜はるの朧月にゴンギツネが十兵の撃った火縄銃の赤い火と青い煙と火薬の匂いにつつまれて目を閉じた頃生まれた子ギツネがいました。母狐はゴンギツネの妻でその子ギツネはゴンギツネのただ一匹の血を引く息子でした。ゴンギツネの妻は一生懸命ゴンギツネの血を引く息子を育てました。ある寒い雪の夜、外で遊んでいた子ギツネが「手が冷たい」と母親に訴えました。見ると子ギツネの手は冷たい雪で遊んだせいで牡丹色になっていました。冷え切った子ギツネの手を温めながら母はこの子に手ぶくろを買ってやろうとおもうのでした。

キツネの親子は、人間の住む町へ向かいましたが、母は町に着いたとたん、ゴンギツネのことが思い出されて、恐怖で足が竦んでしまいます、どうしても恐怖で足が前に出ず腰が抜けてしまう母に子ギツネは「お母さんボクの手に魔法をかけて人間みたいにしてよ、ボク行ってくるから」と言いました。母は手ぶくろを売っているお店を教え、子ギツネの片方の手にだけ人間の手に化ける魔法をかけました。

町に着いた子ギツネは母に教えてもらった店の戸を叩き、母に化かしてもらった人間の手をした方だけを入れ「手ぶくろをください」と言おうとしましたが咄嗟のことで慌てた子ギツネはキツネのままの手を差し込んでしまいます。

「手ぶくろをください」
差し込また子ギツネの手を見て「またキツネが化かしに来たのか」と思った人間でしたが、子ギツネに黙って手ぶくろを二組差し出してくれたのでした。「えぇーっ」と、驚いた子ギツネでしたが、直ぐに母の分もくれたのと知り「一組だけしかお金がないけど、必ずボク払いに来ます」と礼を言い、母ギツネのところに帰り「人間は少しも怖くない」と話、母も「人間は結構イイものなのかしら」と思うのでした。


人間は夫を息子の父を撃ち殺したのかも知れないがそこには誤解が少なからずあり、思い込みや決めつけがあるのかも知れない、親の怨みを孫子で晴らそうとする性根の腐った人間ばかりではないというメッセージを伝えてくれた、有名なふたつの昔話を合わせてみました。

俺だけが特別に分かっているとか分かっていなくて何冊も絵本を何回も読んでも分からない子に限って言いがち、謙虚さが微塵もない。
きっと親の読み聞かせが出来ていないのだろう、大人になって身につくものではない、三つ子の魂100までた。

だから絵本は大事。



令和6年12月27日

             心幸       

12/27/2024, 12:46:34 PM