佐久夜の手記

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指の隙間からさらさらと、
こぼれ落ちる、こぼれ落ちる。
その白い砂の正体はなんだろう。
過去、すなわち記憶だろうか?
未来、あるいは可能性だろうか?

唇の隙間からさらさらと、
こぼれ落ちる、こぼれ落ちる。
その黒い砂の正体なんだろう。
信頼、すなわち友人だろうか?
虚構、あるいは虚栄心だろうか?

こぼれ落ちる、こぼれ落ちる。
我が肉体を形作っていた砂が。
ああ、これこそが喪失。
我が肉体の崩れ去っていく感覚。

戻らぬ過去と記憶を思えば
ああ、日記を捲れど虚しい。
来たる未来と可能性を思えば
ああ、夢見る夜さえ苦しい。
失った信頼を、友人を思えば
ああ、声を放つ喉さえ恨めしい。
私を支えるものが虚構と虚栄心だけと思えば
ああ、自分という存在はなんと愚かしい。

ああ、この喪失感! 偉大なる喪失感!
私から失われた一切は、
この感情によって我が身に迫る。
私を切り裂く後悔と共に、
我が身を痛めつける喪失よ。
これを偉大と言わずなんという?

ああ、喪失感よ! 願いがあります。
私から、もう何も奪わないで。

9/10/2021, 10:12:59 AM