海喑

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私は生まれつき、目が宝石だ。
最初は目だけだったけど、最近は顔全体に広がってきて。
私はその時気づいた。
ー宝石になるにつれ、私の中の記憶がなくなってゆくんだ。
君にこの事を伝えるのが嫌だけど、君のこと、突然忘れたんじゃあ、君も驚くだろうし、言っておくか。
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全てを君に話した。やはり君は唖然とした。
仕方ない。これは私が悪いのだから。
と思っていると
「来て欲しいところがあるんだ。」
と言って、私のことを引っ張って、とあるところに連れてゆく。
まさか…とは思ったけどさすがに違うようだ。
まあ当たり前か。どうせ忘れることを言っても意味は無い

そこは花屋だった。何故だろう。今日は私の誕生日では無いけれど
君はタタタッっと走ってこっちに向かってきた。
その手には、小さな青い花束を持って。
「これって…」
「勿忘草。花言葉は私を忘れないで、誠の愛、真実の愛」
「わぁ…」
「さっきの話聞いた時に思い出してさ、この花が枯れたりするまで
その、俺の事愛したり、覚えてくれるかな。」
私は俯きつつも言う
「何を今更。私は君とのことは日記で書いてあるし、君のことはずっと愛すよ。」
前を向いたら、君が泣きながら私に抱きついてくる。
ごめんね。心配させちゃったね。
と私は君を慰める。
私はその花束を抱えて早速とある作業に入る
枯れない綺麗な花
プリザーブドフラワーを作るために
君をずっと覚えるために、君を愛すために
なんていう理由じゃない
君との思い出を
もっと色鮮やかにするために。
私を忘れないでなんて、
忘れるわけがないじゃないか
プリザーブドフラワー、勿忘草を見つめながら私はそう呟いた
ー勿忘草ー

2/2/2023, 11:30:38 AM