思考の階段をのぼる
幸せってなんだろう。
美味しいご飯を食べること?好きな人とすごすこと?
思考の階段をのぼる。埃の舞う灰色の世界。
幸せってなんだろう。
貧しい人に食べ物をあげること?友達にノートを貸してあげること?
思考の階段をのぼる。のぼり続ける。
ぐるぐるの迷宮から出られない。
幸せってなんだろう。しあわせって幸福ってこと?
私は幸せなのかな、誰が幸せなのかな、逆に、不幸ってなんなのかな。
空気の色が変わって、ボロボロの服を着た老人が階段に腰掛けているのが見えた。
「幸せってなんだと思いますか?」
ぼろぼろの老人はポケットから10円を取り出して答えた。
「足元にね、落ちてたんだよ。私も若い頃は上ばかりみていて気づかなかったんだが、やっと拾えた。やっと出られる」
老人はそう言うと腰を上げて下へと降りていった。
(何が言いたかったんだろう。10円なんて私も沢山持ってる。そんなのが幸せなのかな)
見上げると、階段は果てしなく遠く続いている。
突き抜けた先に見えるましろの空が、美しく輝いている。
そこへ行きたかった。あの空の先に幸せがあるから。
そしたらきっと、ここから出られる はずだから。
重たいぐるぐるが、心の内で渦巻いている。
私は不幸なのかもしれない。あの空に、手が届かない。
しあわせってなんだろう?あの老人は幸せなんだろうか
ぐるぐる少女は出られない。この思考の階段から。
おとなになるまで、大人になっても。
最初から、上に出口はないのだから。
1/4/2025, 11:54:01 AM