anago.

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やっちゃったなぁ。
近場の公園にあるブランコに乗って呟く。昼間とは違って、誰もいない公園内は少しばかり寂しい。ゆらゆら揺れるブランコはオレの気持ちを表しているかのよう。
情けない話だが、些細なことで喧嘩が始まり家出をしてしまった。いつもは言い合いにならないのに、お互い会社でのストレスや睡眠不足も相まって激しい口論になった。毎回口喧嘩で先に謝るのはオレだけど、今日は折りたくなかった。両方負けず嫌いな性格故にヒートアップしてしまい、軽く後悔している。出てけよ、と言われなかったのが幸いだろうか。未だ眉間に皺を寄せている彼に1時間くらい頭冷やしてくると伝えたから、何かあったら連絡してくると思いたい。

そうして過去の自分達に思いを馳せながら、ぼんやりと夜空を眺めていた。ふと腕時計を確認すると、1時間を大幅に過ぎていた。慌てて携帯のロックを解除するとおびただしい数の着信があった。これだけあればわかるだろうに、過去のオレはマナーモードに設定していた。通りで気付かないわけだ。メッセージもたくさんある。今どこにいるのか、悪かった、電話してくれ、だの10数件確認できた。これはオレが悪い。再度かかってきた電話に出ると焦ったようにまくし立てられる。
「...ッオイ...今どこにいんだよ。」

「...気付かなくてごめん。近場の公園にいる。」

「......今向かうから待ってろ。」

「..わかった。ありがとう。」
プツッと無機質な音を立てながら電話が終了する。出迎えようと入口付近で立っていれば、1分もしないうちに彼が到着した。向かってきた勢いできつく抱きしめられ、ほんの少し苦しい。
何も言わない彼に声をかける。
「..なあ、今さ、星が綺麗だぞ。」

「...知ってる。」

「...多分オレ達考えてること一緒だろうからさ、喧嘩になる前に散歩に行こうよ。」

「...でも、今日は俺が悪いと思う。疲れてるのわかってて口がでちまった。本当に悪いと思ってる。」

「...わかったわかった。今日のとこはオマエが悪い。それでいいよな。」

「...うん。それと散歩も行きたい。」

「.....はいはい。日中でも夜でも行きたけりゃ行くよ。」

あーでもないこーでもないと普段の会話を思い出したかのように話しながら帰った。手を繋ぎながら、な。



その後、記念日とかを気にしないタイプの人間である彼が嬉しそうに”‬星空デート記念‪”‬と日記帳に書き込んだのを見たのはオレだけの秘密だ。

2/1/2024, 4:10:20 PM