夜の中で、言葉がふいに重くなる。
枕に沈む呼吸の奥、
まだ誰にも知られていないわたしが、
そっと願い事を結びはじめる。
お願い。
痛みがちゃんと「痛み」でありますように。
お願い。
わたしの好きが「怖くない」と
言ってもらえますように。
目をつぶったまま、
視えないものの形を指でなぞる。
それはきっと、
幼いころに描いた空想の友だちと、
今朝読んだニュースと、
昨日言えなかった「ごめんね」が
溶け合ってできた、
不思議な紙片。
それを折って折って、
できた星がひとつ、布団の中に転がる。
どうか、
その星が光らなくても、
願いごとであることをやめませんように。
朝になれば、忘れる。
昼になれば、笑う。
夕方には、また思い出してしまう。
だから、
せめて夜には、
私がわたしの願い事を
忘れないでいてあげたい。
聞こえなくてもいい。
届かなくてもいい。
ただ──願いごとが「ここにあった」と
夜のどこかに記されますように。
7/7/2025, 1:55:41 PM