三日月

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ずっと隣で

「もう知らない!  |啓司《 けいじ》くん大嫌い」

「はぁ、何だよ大嫌いって?」

「こっちこそ|結愛《 ゆあ》のこと嫌いだから」

「もう私達別れよう」

「そうだな、もうお終い、別れよう」

 私と啓司くんは幼稚園からの良くある幼馴染。

 異性として意識したことはずっと無かった。

 それも高校二年の三学期の始業式迄は⋯⋯。

 ところがその日の帰り道で告白を受けることになる。

「高校に入ってから、結愛のこと異性として見てた」

「えっ⋯⋯急にどうしたの啓司くん」

「僕は結愛のことが大好きデス」

「ま、マジ⋯⋯」

「この間結愛が告白を受けてた時、正直嫉妬した」

「啓司くん⋯⋯」

「結愛は僕が守る!  付き合って下さい」

「う、うん、宜しくお願いします」

 その日から、私は啓司くんと付き合うことになった。

 相変わらず仲の良さは変わらないまま。

 でも、啓司くんを異性として見るようになっていた。

 ほんの些細な仕草でも照れくさくなる。

 今までは感じたことの無い感情!!

 手と手が触れただけでドキッとするようになった。

 今までずっと隣で笑いあってたはずなのに。

 今はドキッとする瞬間が増えた気がする。

「ねぇ、啓司くんは何でSNSやり始めたの?」

「小説書いてみたかったんだよ、前に言ったろ」

「始めることに何か意味があるの?」

「仲間が出来るし、投稿したの宣伝できる」

「ふーん、そうなんだ!!」

「あれ、結愛は僕がSNSやるの嫌だった?」

「よく分から無いから嫌とかないけど······」

「なら、結愛も始めてみたら、僕フォローしてイイよ」

「う、うん······」

 私もやってみることにした。

 啓司は沢山のフォローとフォロアーがいる。

 真似て同じ人をフォローしてみた。

······わ、私も小説書いて見ようかな! 楽しそうだし。

 一緒にいて、啓司はスマホばっか見ている。

 そんな啓司を見て私は何だか少し寂しく感じていた。

······なら、私もやればいいじゃん!  

 寂しがり屋の私はそう思ったのだ。

······同じ趣味の話が出来るようになるし、イイよね。

 そう思っていたのに、既に時遅し!

 啓司にはもう既に小説仲間がいた。

 どうやらDMでグループを作り会話している模様。

 それも私がいるのに、ずっと隣で······。

 悔しいけど嫉妬した。

「ねぇ、啓司くん私寂しい」
 
「えっ?」

「だってずっと会話してるじゃん」

「変な会話してないよ」

「でも寂しいの」

「なら見てみる?」

「イイの?」
 
「イイよ?  何も無いもん」

 会話してる内容を見せてもらう。

「この人達は男性?」

「女性だよ!  色々小説のこと教えて貰ってる」

 啓司くんの口から女性と聞いて嫌な気持ちになった。

「言っとくけど浮気してないから」

「うん、分かってるけど」

 でもかじりつくように啓司くんは画面から離れない。

 嫌な気持ちは増していった。

······私は無視でイイ存在なの?

 ずっと隣で私は啓司くんが会話を終えるのを待つ。

 なのに一向に終わらない会話······。

 せっかく自分も小説始めたのに······。

 啓司くんの彼女になったのに······。

 何もかもが嫌になっていた。

 それは。生きることさえも······。

 そんなある日、啓司くんがDMでやり取りしてる子にプレゼントを送っていたことが発覚する。

「ねぇ、何でコーヒー送ったの?」

「お世話になったからだよ!  ダメだった?」

······駄目にきまってるじゃん

「私は内緒でこんなことされるの嫌なんだけど!」

「別に浮気じゃないから」

······浮気だよ!

······プレゼント選ぶ時、彼女の喜ぶ顔想像してるもん。

···心の浮気だよ

「でも、私は嫌だ!  浮気だよ」 

「何言ってんの?  意味が分からない」

「啓司くんのこと好きなの」

「はいはい、もうしません」

 そう約束してくれたはずだった。

 でも、裏切られることになる。

 また彼女にコーヒー送ってた。

 それも私には内緒で。

「ありがとう!」

 彼と一緒に、彼のDMを見たら書いてあった。

 それも写メ付きで。

 この時、私の精神が崩壊した。

 ショックだったし、ここから消えたいと······。

「啓司くんの嘘つき」

「だから、浮気じゃないし」

「約束したじゃん」

「だって結愛が怒るからね」

「何それ······」

「いちいちウザイ!  邪魔しないで欲しい」

「······」

「もう、見ないで、僕のフォロー外してくんない?」
 
「······やだ」

「何で?  あのさ、そんなに邪魔して楽しい?」

「邪魔してないよ!  私は啓司くんが好きなの」

「だから何?」

「私も小説始めたよ」

「あのさ、真似しないで欲しいんだけど······」

「何でよ、楽しそうだったし、私も仲間入りたい」

「今の結愛嫌い!  普通にしてる結愛が好きなのに」

「······」

 否定されて悲しくて、耐えられなかった。

 ただ、ずっと隣で同じことしてたかっただけなのに。

 寂しがり屋だから同じ趣味で沢山会話がしたかった。

 ただそれだけの事なのに、悔しくて!

 だから別れる決心をした。

 怒られるくらいなら一緒に居ない方が良いのだろう。

「啓司くん別れよう」

「そうだな、別れよう」
 
 啓司くんも別れようと言った。

 引き止められたりしなかったのが少し残念だけど。

 付き合ってない時は仲良かった。

 些細なことで喧嘩してもすぐ仲直りしたよね。

 価値観やすれ違いがあっても離れなかった。

 でも、今は違う。

 二人は別れを選択したのだ。

「啓司くん、今まで愛してくれてありがとう」

「お、おう······」

······貴方の包み込んでくれた優しさは忘れません。

······貴方が愛してくれたことも忘れません。

······二人の為に、私は一歩踏みだします!

······啓司くんさようなら。

 心の中で呟くと私は彼の家を後にした。

 明日の私は元気でありますように!

 笑顔でありますように!

――三日月――

3/14/2023, 12:50:35 AM