霜月 朔(創作)

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そっと包み込んで



貴方の心は、
今、何処に居るのですか?

貴方の腕は、
私を優しく包み込み、
貴方の口唇は、
私に愛を囁くけれど。

でも…。
貴方の瞳は、
私を見てはいなくて、
貴方の心は、
他の人を想っているのです。

そんな、私の心は、
まだ過去の影を追い、
過去に縛り付けられていて、
貴方ではない人を、
想い続けていて。

寂しさを埋めるように、
貴方の温もりに包まれ、
貴方の偽りの愛に、
溺れていきます。

二人の吐息は、
時計の音を掻き消して、
偽りで彩られた花が、
私の耳元で咲いては、
散っていきます。

「愛してる」――
その言葉の輪郭を、
誰のものでもない微笑みで、
私は指先でなぞるのです。

貴方の火照る身体を、
そっと包み込んで。
貴方の空っぽの心も、
そっと包み込んで。
私は微笑みかけるのです。

ですから…
私の偽りの恋も、
そっと包み込んで。
私の孤独な心も、
そっと包み込んで。
今だけは貴方を、
愛する事を赦して下さい。



5/24/2025, 8:51:00 AM