秋風に戦ぐ曼珠沙華の群れ。
揺らめく火の粉のような緋色の花を一輪手折り、稲刈り唄の歌声が聞こえてくる畦道を歩く。
以前来た時よりも人が増え田畑も増えて、山に森に、道が出来た。
そろそろ、ここにも人の手が入ってしまうのだろう。
森の奥、一本の木の前で歩を止めた。
君のために植えた橘の木、暫く見ないうちに見上げる程にまで育ち、懐かしい匂いが辺りに漂っている。
その木の根元に膝をつき。
少しだけ傾いた青黒い石の傍らへ、手にしていた曼珠沙華をそっと置いた。
仕方ないことだ、形あるものはいつか必ず跡形もなく消えてしまうのだから。
テーマ「花畑」
9/18/2024, 5:49:00 AM