最果ての地。ここに着いてから、まだ誰とも会っていない。
荷物ひとつで砂漠の中をとにかく歩き回ったボクは、もうダメかもしれない、と諦めそうになったとき、遠くにこの地を見つけた。どうにか辿り着きたくて、もつれる足を叩きながら、必死で歩いた。気がついたらボクはベッドで眠っていた。窓から射し込む太陽の光が眩しい。テーブルには食事が置かれていた。パンとシチュー。まだ、あたたかい。空腹だったボクは夢中でそれらを胃に流し込み、ひと息ついた。
さて。
ここはどこだ?
これは誰の家だ?
そもそも誰がボクをここに運んでくれたんだ?食事も、誰が?
疑問が次々と浮かぶが、とにかく今は安全な場所にいられることの安堵した。ボクは逃げてきたからだ。いろいろなものから。ボクを逃がしてくれた人々はみな、きっともう生きてはいないだろう。
ドアを開け、外に出てみる。
人はいないが、寂しい感じはしない。不思議と安心する場所だった。噴水のわきに看板があった。『最果ての地』と書いてある。遠くまで来てしまったんだな、ボクは。
大きくなったら、科学者になる。幼いボクはそう決めていた。父のように立派な科学者になることを夢みていた。なれると信じていた。母のように料理が上手くて優しい妻と可愛い子どもたちがいる、ありきたりだけど、そんな未来をみていた。
しかし、全く違う未来がいまここにある。目の前には誰もいない。知らない場所にひとり立っているボクがいる。正直お先真っ暗だ。住めそうな建物や水がある、それは大きな救いではあったが。
未来は思い描くことはできるが、思い通りに行くわけではなかった。でも、可能性を信じたい。これから誰かに会えるかもしれない。誰かがボクのようにやってくるかもしれない。人はいないが、何かがこの最果ての地を守っているのは確かだ。それらと共存していけるかもしれない。世の中、決まったことは何もないのかもしれない。だから、ボクができることからひとつひとつ始めてみる。焦らずゆっくり進んでみよう。見えない未来をボクが今から作るることができるかもしれないから。
11/21/2025, 1:26:05 AM