まるしゅぎょ

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―――それをどこで知ったんだ?

男の背中から一気に汗が引き吹き出た。
待ち合わせた喫茶店の、人気No.1のランチメニューを注文する女を凝視した。
特別に美しく揃えているわけではないが醜い程でもない、清潔とも不潔とも言い難い平凡な爪。
平凡な女。
俺の愛した女。

女は、届きたてのオムライスを口に入れながら俺の方をチラリと見た。
平凡な大きさの甘そうな唇、俺の愛する唇。
何も言わず、ただお互いが思うままに食べ、ただ時間だけが過ぎていく。

「ねえ」
女が口元を拭いながら言った。
俺の愛する平凡な声。
取り立てて目立つところのない、どこにでもありそうな目立つことのない声。
「私、見たのよ?」
体や頭はそのまま、そっと申し訳なさそうに目だけを動かし俺を見上げる。
俺の心を溶かす、その愛すべき瞳。
俺は背中を伝う汗をなだめるかのように答える。
「何を?」
答えは返ってこなかった。
二人分のレシートを持ち、女は去って行った。
女は去り際にこう言った。
「どこにも書けないこと」
俺は思った。
―――書かずに今言えばいいじゃないか。
くだらない。





「どこにも書けないこと」

2/7/2026, 12:06:29 PM