「今度の日曜日、たまにはどっかに行こうよ」
スマートフォンを片手にリビングのソファで寛ぐパートナーの彼に声をかける。
二人してインドア派。
大概のことは近所で完結できてしまう。
だけどなんとなく、出かけたい気分の私がいる。
春めく雰囲気がそうさせるのかもしれない。
「それなら、久しぶりに外で待ち合わせしてみない?」
インドア派の二人はときどき行動的になり、そういうモードのときは迷いがない。
面白そうな提案には乗っかってみる、そういうところで似たもの同士。だから、居心地がいい。
当日の朝、いつもと変わらず一緒に朝食を摂り、ゆっくりとコーヒーを飲む。
「それで今日はどこ行きたい?」
「美味しいものが食べたい」
「アバウトだなあ。オレは観てみたい映画があるから、映画館に付き合って」
いつもは、ネトフリやアマプラを家で観ているから、大きなスクリーンは久々だ。ホラー以外なら何でもいいよ、と答えておいた。
私はちょっとだけ念入りにメイクをしてから、
彼は軽く買い物をしてから、
それぞれ待ち合わせの場所へ向かう。
同じ家なのに二人は別々に出かける。
なんだか不思議で、なんだか面白い。
先に待ち合わせ場所に到着していた彼が、まだ少し離れた歩道にいた私に手を振ってくるが、見たことのないジャケットを羽織っている。これを買うために急ぎ家を出たらしい。
そういう私も、内緒で買っていた白いコットンスカートを着ている。デニムパンツとの重ね着が好みだけど、他のボトムスとも重ねずに、いつもとは違う感じにしてみた。
お互いに照れくさくて、笑って誤魔化した。
電車に乗って、シネコン系の大きな映画館で話題の映画を観て、終わったあとは同じ階にあるゲームセンターに吸い込まれるように入り、UFOキャッチャーで遊んだ。
ちょっとオシャレなカジュアルイタリアンで食事をしながら、久しぶりにグラスワインなんぞを飲んでしまった。
「たまには、こういう感じも悪くないね」
「そうだね、たまにはね」
二人してちょっとほろ酔いだから、家までの道すがら、手を繋いで歩いてみる。
暦の上では春だけど、夜はまた肌寒くて、通り抜けてく夜風が少しくすぐったかった。
【たまには】
3/6/2026, 5:33:19 AM