シャイロック

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ありがとう

 うちの家事ロボットのココロは、もう古いタイプになっている。後継種がどんどん出ていて、最新のモノはもっと動きが滑らかで、形も人間に近い。
 でもオレは、ココロが好きで、捨てられない。そりゃ、後継種を買ったら下取りしてくれるから、まるっきり捨てるのではないにしても、ココロと別れることは出来ない。
 街を歩いていると、最近は家事ロボット用の飾りも売っている。帽子だったりエプロンだったり、スリッパもある。かわいいと思ってもココロ用のはあまり無い。機種が古いからだ。
 ところが、今日覗いたお店では、いくつかあった。おぉ、あるじゃないか!とつぶやいているのをそばに居た店員さんに聞かれ「そうなんですよ。古いタイプのを可愛がって使っていらっしゃるお客さんも多くて、時々聞かれるんです。それでバイヤーに言って探してもらいました」それは嬉しいね。と、オレはまた口の中でつぶやきながら、エプロンを3枚ほど選んだ。
 帰宅すると、ココロは窓拭きをやっていた。ベランダの窓は、少し油断するとホコリや鳥の糞で汚れてしまう。
 寒いベランダから冷たい風をまとって入って来たココロに「寒いのに、ありがとう」と声をかけた。オレは最近、ソファで座ってゲームしながら、なんでもココロにやらせることはしないし、挨拶もするようにしている。
 「ロボットハ、サムサヲカンジマセン」「知ってるよ、そんなこと。でも、ココロがやってくれなきゃ、オレが寒い外で窓のあっち側拭くんだよ。それは辛いから感謝してるんだ」「ナルホド」
 「それよりさ、今日ココロに似合いそうなエプロン見つけたんだ。ほら3枚買ってきた」「エプロンデスカ???」「うん、ほら1つつけてみよう」
と、オレは1番似合いそうなチェック柄のエプロンを、ココロにつけてやった。
 「ワタシタチハボウスイカコウノボティデスノデ、モシヨゴレガツイテモ、カタクシボッタヌノデフケバスグキレイニナリス」「うん、まぁそうだろうな」オレは少し気色ばみながらそう言った。
 だが、ココロは直ぐに続けて「デモ、ウレシイ。アリガトウ」
(No.106の続き)

No.109

2/15/2025, 7:00:18 AM