小音葉

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あの頃は狭い壇が全てだった
当たる陽なければ世界の終わり
伸ばした爪では割れない硝子の先に
群がる花を睨みながら
きっと同じように咲いてみたかった

出る杭を打つか、上手に接ぐか
箔押しの絆で満足するか
爪を立てて剥がす輩に、手向けられる色などない
星に願いながら見つかる日を恐れた
遠ざかるばかりの崖に唾を吐いて
狂った芝居で冷める頬
叶う夢などありはしない

左足で捏ねて作られた土塊は
乾いて崩れて去っていく
自ら這いずり出た素振りで
幻影に後ろ髪を引かれながら
幼い私を捨てていく
またひとつ、骸を運ぶ花筏
露と消えにし諸恋の夢

(春恋)

4/15/2025, 12:34:00 PM