「子供のように」
小さい頃は、早く大人になりたかった。小学生の時、自己紹介カードの『今いちばんほしいもの』の欄に『年齢』となんとも可愛くない答えを書いたのをよく覚えている。とにかく自由が欲しかった。自分の力だけでは何もできないのがもどかしかった。一人でできないのが悔しかった。だからなんでもできる大人になりたかった。今思うとなんと浅はかで愚かで、まっすぐな願いだろうか。絵に描いたような子供像で、未来を夢見る子供らしい子供だったのだ、私も。あの頃の私は、今の、大人にも子供にもなりきれない私を見たらどう思うだろうか。確かにあの頃より自由は手に入ったかもしれない。やりたいことを自分の力でできるようになった。だけど同時に、不自由も手に入れた。勉強、部活、進路、友人関係。やりたいことをやれない理由を、今の私はたくさん見つけてしまった。周りの友人たちは口を揃えて「小学校の頃に戻りたい」という。子供は大人に憧れて、大人は子供になりたがる。よく聞く話だが、どうしようもない。今を精一杯生きるしかないのだ。と、そんななんの足しにもならない結論を、滑り台の頂上で考える。大人でも子供でもない現在の私は今、公園で遊んでいる。子供のように。もちろん滑り台も正規ルートではなく滑る方から登った。ブランコも思いっきり立ち漕ぎしたし、あのよく分からないびよんびよんする乗り物も堪能した。違うのは今が一人で、学校帰りで、すっかり暗くなった夜の10時半だということか。あの頃の門限は確か17時、これ以上ないほど破っている。これが成長して手に入れた自由か。だとしても、私は。
「大人になんか、なりたくない」
10/13/2024, 5:46:24 PM