小砂音

Open App

#23 無色の世界

“無色の世界”というフレーズを読んで、小さい頃、この世のものがすべて透明だったらどんな色に見えるんだろうと疑問に思っていたことを思い出した。
真っ白でも、真っ黒でもない世界。
だけど、すぐになのか、しばらくしてなのか、とにかくわたしは「そうか、透明という色が見えるのか」と納得したことを覚えている。

透明色。
見られるとしたら、なんとなく死の間際な気がするな。
それに、死ぬまでに一度も見られない可能性の方が遥かに高いだろうなと思う。

透明色。
透き通った、すごく綺麗な色なんだろうな。
そして、実は。お腹の中にいるときに、薄い瞼を閉じたまま、安心しながら感じていた色なのかもしれないなと思う。

透明色すら存在しない無色の世界は、どんなふうに見えるんだろう。
白も黒も立派な色だから、絶望に満ちた世界の比喩としては、本当は使いたくないけどな。

4/19/2023, 9:42:34 AM