椋 muku

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白くて軽くて綺麗で神秘的で。そのくせ手に触れた途端体温で溶けてしまう。水となった液体もとどまるということを知らず滴り落ちていく。儚い。淡い。切ない。

10℃以下の部屋を後にして学校へと向かう。晴天。踏みしめる雪はきしきしと音を立てる。呼吸をする度に現れる白さが忌々しい。特別なことなんて何一つもない、今日も。ただ学校へ行き家に帰り眠ることの繰り返し。

PM4:00.カーテンで締め切った教室は外の世界とは遮断されたようなそんな空間だった。

「雪降ってきた。今日車呼ぼうかな」

「あ、私も車呼ぶわ」

そんな会話を聞いて外が晴天ではなくなったことを知る。厄介だな。でも帰りなら髪が濡れても問題ないか。
そして私は外へ出る。少し時間をずらした今は歩く生徒が見られない。風が強いわけでも降る雪が多いわけでもない。心地よい寒さが手をかじかませるような感覚。雪がまとわりつく度に溶けていく。掴めそうで掴めない存在が煩わしい。付いた雪を落とすことすらできずに濡れていくことを覚える。

PM9:00.雪が止んでしまった空に青さは残っていなかった。私にとって邪魔な存在。しかしいざ無くなってみると少し寂しいような気もする。外へ出てわざと大きくあくびをした。白い息が不思議と忌々しくなくてどうでもよかった。ただただ降り始める雪を待つばかり。1枚降りてきた雪はいつも通り手に触れては溶けて滴っていくのだった。

題材「雪を待つ」

12/15/2024, 11:02:54 AM