白糸馨月

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お題『命が燃え尽きるまで』

「命燃え尽きるまで、がんばろー!」
 運動会のクラス対抗応援合戦の前、クラス全員で円陣を組み、クラスの目立つ女子が声を張り上げた。皆もそれについていくように「おー!」と歓声をあげる。
 だが、私は『運動会ごときで命を燃やし尽くすな』とつっこまずにはいられなかった。私一人だけそれに参加してないことがバレないように口パクだけで合わせた。
 クラスの目立つ男女がてづくりのきらびやかな衣装を着ているうしろで、その他大勢の私達がポンポン持って踊る。正直、やる気はないし、クラスの結果がどうなろうと私にとっては知ったことではない。クラスの目立つ奴から私がなんとなくバカにされていることが分かるからなおさら協力する気なんてない。
「めんどくせぇ」
 とこぼす私の横から「だよな」と声が聞こえる。私と同じようにやる気ない奴がいたんだと思う。そいつは、顔がいいだけで目立つグループにいたが、最近なんかあったのか一緒にあいつらとつるまなくなったクラスメイトだった。
「あいつら、自分達が目立ちたいだけなんだよ」
「そう、そうなんだよ!」
 私は思わず小声で同意した。この男、こんなに陰気だったかと思うと同時に親近感がわく。
「あいつらのことだから、自分たちだけで気持ちよくなってるだけだわ、マジできしょい」
「へぇ、君ってそんなこと言うんだ」
「言う言う、だってあいつらウザイし」
 そうこう言っているうちにパフォーマンス開始を告げるホイッスルが鳴る。私達はさすがにクラスの和を乱す勇気がないので、テキトーにちゃんとやってますよ風を装った。
 だから、余計なことを考える暇があるんだろう。
『こいつともっと話がしたいなぁ』
 気のせいかちょっと視線を感じる。こいつも同じ考えだと嬉しいなと思ってしまった。

9/15/2024, 3:04:28 AM