神様だけが知っている
僕は天使だ。
神様だけが知っている、人間達の寿命。
その寿命が尽きる人を天界へと導く為に、人間の世界に迎えに行くのが、僕ら天使の使命で。
今夜も、僕は神様に告げられた人間を迎えに行った帰りなのだが。
「ねぇ、君って天使みたいだな」
俺を迎えに来たんだろ?
なんて、突然、一人の青年がベッドから、僕の方をしっかりと見て言うから。
「……君、僕のことが見えてるの?」
空を白い羽で飛ぶ僕を見ても、不思議そうにしない彼は。
自分の死期が近いことをわかっているみたいだ。
けど、それは間違いじゃなくて。
確かに、人間に僕ら天使が見える時というのは、天界から迎えが来た時や。
稀に、迎えが来る時期が迫っている者にも見える場合がある。
多分、彼は後者なんだろう。
だから、俺は彼へと笑ってみせる。
「それは神様だけが知ってるんだ」
どうか、彼がその時を安らかに受け入れられますように、と願って。
そんな俺の気持ちが伝わったのか。
彼も俺へと微笑むと。
「だとしたら、最後の時は君に迎えに来てもらいたいな」
「……それはどうして?」
「君みたいな綺麗な天使が迎えに来てくれたなら、きっと幸せな終わりになると思うからさ」
なんて。
どうしてかな、俺の顔が熱いし。
胸も苦しくなってきた気がする。
天使は病気にならない筈なのに。
これも、神様なら知ってるんだろうか。
End
7/4/2024, 11:20:10 PM