「君と最後に会った日」
好きだと自覚したのは卒業式の日だった。遅すぎる。でも勇気を出して第2ボタンをもらった。小さな巾着に入れていつも持ち歩いている。馬鹿みたい?笑わば笑え。結婚もしたけどうまくいかなかった。無意識に比べてしまったのだろう。相手にしてみれば面白くないよね。
彼はがんばる人。手を抜くことなんてなかった。大変なことをちっとも大変そうにしないでやり遂げる人。でもね、知ってるよ。文化祭の実行委員長をしていた時、君の提案が猛反対されて、いろんなところに頭を下げて説得して回っていた。
裏で疲れ切って頭を抱えていた時、話しかければよかった。でもね、一度も話したことないのに変だって思われるのが怖かった。自販機でジュース買ってあげれば済むことなのにね。私が政治家になったのは、そんな後悔があったからなんだ。黙ったままでいることで後悔したくないから。
「ありがとう。これで東京でも頑張れる」
君と最後に会った日、そう言った。本当に最後なのかな?もう結婚した?どんな仕事をしているの?まだ地元にいる?言えない言葉ばかりが増えていく。
そんな時、母校から講演会の依頼が来た。文化祭で学生時代の話をしてほしいと、文化祭実行委員長からの依頼。君じゃないけど、君のために受ける。
あの渡り廊下は今もあるかな?
6/26/2024, 12:10:47 PM