時計の針
鈍色の振子が揺れる。
天井近くにずらりと並ぶご先祖の表情がはっきりと見えてきた頃、閉まりの悪い襖が少しだけ悲鳴を上げた。
細く眩しい光が数秒だけ刺し込み、また苦しそうに音を立て暗闇に戻った。
姉や親戚達の寝息と秒針の音が部屋を埋め尽くす。
明日はみんなで何をするのかはまだ決まっていない。
だけどワクワクして眠れない。
そんな豊かな夏休みを君にも与えてあげたかった。
満たされていた頃の記憶をビルの谷間でふと思い出し、
少しだけ大きくなった柔らかい手を振子の様に繋ぐ。
2/7/2023, 2:29:45 PM