作家志望の高校生

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俺の幼馴染は守銭奴である。それも、かなり重度の。
口を開けば金のこと、大事なものを問えば、1に金、2に金と答えるような奴だ。
俺はずっと、彼のことを意地の悪い男だと思っていた。
ずる賢くて、金のためならなんだってする、狐みたいな奴。
近頃じゃ危ない商売に片足を突っ込みかけているようだが、持ち前の危機察知能力からなのか深入りはしていないらしい。
そんな彼に、まさか、金を投げうってでも守りたいものがあったなんて知らなかった。察しはつくだろうが、奴にとって俺は、金より価値のあるものだったらしい。
今思えば、夜道を一人で出歩くのは、いくら男だからといって危険すぎる選択だっただろう。
頭のネジが外れた奴らの本領は、日が沈んでからだ。
人通りの少ない道、新月で街灯もない田舎で、ぽつりと一人出歩くいかにも出不精そうな若い男。
格好の餌食である。その推測は外れることなく、俺は抵抗する間もなく横付けしてきた車に引きずり込まれた。
財布と携帯は奪われ、口に猿轡を噛まされ、手足は太い縄でぐるぐる巻きにされて縛られた。お手本のような誘拐で、でも当事者となった自分にとっては恐怖以外の何物でもなかった。
俺のような陰気で誰からも気にかけられないような見た目をした人間は、いなくなってもしばらくの間気付かれず、熱心に探し回る面倒な者もいない。そう思われた。
が、予想外にいたのだ。先述の、守銭奴の幼馴染。奴が、全財産、全権力をフル活用して俺を探している、と。誘拐犯共の焦ったような囁き声が聞こえた。
面倒事になる前にさっさと俺を金にしてしまいたかったのか、俺は適当に何度か殴られて意識を落とされた後、好き者の集まる悪趣味な売買現場に運ばれた、らしい。意識がない状態だった俺は全く覚えていないが。
どうやらそこで幼馴染は、生活に支障が出ないギリギリの額だけを残して、全財産を使って俺を買い戻したらしい。意識が戻った時目の前にあった奴の顔は、珍しく泣きそうで、けれど安堵していて、笑ったような怒ったような、あるいは泣いているようなおかしな顔をしていた。
俺の殴られた傷に気が付いた彼を窘めるのは少々骨が折れたが、俺が彼に後ろから全力で張り付かれて自由を奪われるのを代償としてなんとか押さえた。
想像以上の幼馴染の執着に鳥肌が立つ一方で、あれだけ金が好きな、金が代名詞のような男の一番が自分である事実に口角が緩むのはどうしても抑えられなかった。

テーマ:お金より大事なもの

3/9/2026, 9:11:32 AM