記憶の海はいつだって緑色だ。
砂浜もざらざらと荒く、小石や雑草が混ざっている。
波は荒く、常時強い海風が吹きすさぶ、海水浴なども出来ない何もない海辺だった。
だから、海のある町で育ったわりに、私には海に行った記憶が殆どない。
海派、山派なんて言うけれど、実際海に向いた人間、山に向いた人間に分かれるのだろう。私は完全に後者なのだ。
それでも、私自身の記憶の海の中に、あの海の色は溶けているのだろう。
海の絵を青色で塗る度に、
(本当は緑色なんだけどな)
と頭の片隅で私が囁くのだ。
5/13/2025, 2:17:19 PM